ある高校生の母親の述懐

「ウチの息子に来た自衛隊加入募集パンフレット、『苦学生求む』だった。この言葉の恐ろしさを伝えたいです」
 2015年7月初め、高校生の息子を持つ母親のもとに、自衛隊地方協力本部からパンフレットが届いた。
〈医師、看護師になりたいけど、お金はない! 学力、体力自信有り! 集団生活も大丈夫! こんな人を探しています〉
 防衛医科大学校の募集案内にはそうあった。パイロットの案内も同封されていた。
 フェイスブックに冒頭の不安を綴(つづ)った母親の脳裏をよぎったのは徴兵制だろう。政府は「違憲」との判断を示すが、集団的自衛権の行使が内閣の憲法解釈で進められていることを思えば、「徴兵制も解釈次第では」との不安に駆られるのも無理からぬことだ。
 参院で審議中の労働者派遣改正法案で"生涯派遣"が現実味を帯び、低賃金のまま教育格差がさらに進むことを考えればなおさらだ。米国では就職に有利な大卒の資格を得るために学費ローンを組んで進学するケースが多く、授業料の面倒を見るという勧誘で軍隊に入る若者が多いという。いわゆる「経済徴兵制」だが、イラクやアフガンなど戦闘地域派遣後に待ち受けていたのはPTSD(心的外傷後ストレス障害)という結果だった。
「徴兵制というと、戦前のように赤紙1枚で簡単に動員されるイメージが強いが、今の対テロ・地域戦争の時代に、それは現実的ではない」
 軍事ジャーナリストの神浦元彰氏はそう言う。むしろ怖いのは、2016年1月から導入される「マイナンバー」が徴兵の手段になることだという。
「ベトナム戦争後に徴兵制を廃止した米国で、今検討されているのは『選抜徴兵制』。国民の特技を語学や危険物取扱免許、特殊車両免許など100項目程度で把握し、必要に応じて徴兵する。マイナンバー制も実はそれが究極の目的といっていい」
 不気味な足音が聞こえてきそうだ